ビルクリーニング分野の「受入機関適合性」について

ビルクリーニング分野で特定技能1号外国人を受け入れたい、という企業様からのご相談がありました。今回初めての受入となるとのことで、当該外国人の在留資格の期間更新のタイミングを見計らってのご相談でした。

外国人の方の要件はそろっており、次は受入機関の要件チェックとなりました。あらかじめ準備しておいた必要書類に沿って話を進めていると、受入機関適合性に関わる一番の入口で、何だか怪しい空気が醸し出してきました。

参考様式(必要書類のひとつ)「ビルクリーニング分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」の第3条にもある「建築物清掃業登録証明書」または「建築物環境衛生総合管理業登録証明書」を取得していない、とおっしゃるのです。

確かに、「登録証明書」ですからその名の通り許可制ではないので、登録証明書がなくても事業ができるのですが、特定技能1号外国人の受け入れとなると話は別です。代表者様と協議を重ねた結果、これを機に登録をしてみよう、ということになりました。理由のひとつは、やはり人手不足です。日本人の求職者がなかなか出てこない中、頼りになるのは外国人労働者です。技術・人文知識・国際業務の在留資格でいくとなると、該当性においてなかなか当てはまりませんし、かといって、身分系の在留資格をお持ちの方も、なかなかきてくれそうにない中での代表者様の決断でした。

建築物清掃業登録のためには、人の要件である人的基準、すなわち清掃作業監督者設置のハードルが一番高そうです。清掃作業監督者となるには、ビルクリーニング技能士1級または建築物環境衛生管理技術者たることが必要であり、さらに、ビルクリーニング技能試験は国家資格なので、試験は年に一度きり。実技作業試験は少人数での審査となるため、およそ3ヶ月かかるそうで、合否の結果が出るまで4ヶ月待つことになります。

2021年の試験は9月3日で募集が終わってしまったという最悪のタイミング。ビルクリーニング技能士1級合格をもってその後厚労省指定の研修を2日間受け、そこからやっと管轄の保健福祉事務所に相談に行き、何ヶ月かかけて書類を揃えるという気の長い話となりそうです。 相談者様初となる特定技能1号外国人を無事受け入れられるのは、2年ほど先になりそうです。しかしその代表者様からは、そんな先のことであるにも拘わらず、小職にやって欲しいとのお言葉を頂戴し、心から感謝感激雨アラレの一言であります。2年後にも予定が入っているというのは、とても大きな励みになりますね。

特定技能「受入機関適合性」について(11)

受入機関適合性に関わる「⑥実習認定の取消しを受けたことによる欠格事由」については、技能実習制度における実習実施者として不正行為を行い、受入れ停止期間が経過していない場合、および監理団体として許可を取り消され、当該取消しの日から起算して5年を経過していない場合は、受入機関としての欠格事由に相当します。

しかし実習実施者や監理団体の中で、旧態依然たる思考で外国人労働者を管理する事例がたまにあるようですね。

昨日、敬愛する行政書士の方から、とある事例を伺いました。技能実習制度における実習実施機関が、特定技能所属機関として、技能実習を終えた外国人や移行する外国人を引き続き特定技能外国人として受け入れていた際の事例です。

特定技能1号として活動している間に転職し受入機関が変わった場合は、在留資格変更許可申請が必要となるところ、当該受入機関はそれを知らなかったようで、入管から4ヶ月を過ぎた現在まで、なぜ変更申請がなかったのか資料を求められたとのことです。

通常なら、知らなかったものは知らなかったものとして、「認識が足りませんでした、以降このようなことのないよう気を付けます」などと、お詫び分を添えてひたすら謝り、併せて事実に基づいた経緯を説明すれば済むことです。それをなんと、下手なストーリーを偽造し、その後さらに入管から突っ込みが入り(追加資料を求められ)、身動きが取れなくなったところに、知り合いの偉い議員さんに頼ったというのです。

そこは是非、議員さんの名前も知りたいところですが、これはあってはなりません。今後さらに辻褄が合わなくなり身動きが取れなくなることは想像に容易いですし、今後特定技能外国人を受け入れられなくなる可能性もあります。

確かに、議員さんが動けばそれこそ神風が吹くでしょうし(審査結果が早く出たり(汗))強い力を持つことには間違いないのでしょうが、最初に申し上げた旧態依然たる思考がなんともエグイです。こんなんで外国人労働者を含む従業員を護っていけるのでしょうか?何かあれば都度、その議員さんにお願いし、お饅頭とか贈るのでしょうか?

受入機関の欠格事由の話から少しずれてしまいましたが、ともすると実習実施者としての不正行為につながりかねない情けない事例でした。

特定技能「受入機関適合性」に係る入管からの指導勧告ついて

受入機関適合性に関わる欠格事由について述べてきましたが、少し中断して、先日入管から受けた是正勧告について書いてみたいと思います。

ある受入機関が特定技能1号外国人を受け入れる前に、労働基準監督署から是正勧告を受けていたことにつき、入管から指導勧告がありました。当該受入機関は、とうに過ぎ去った事由であること、指導に従って是正報告書を提出済だったことから、特定技能外国人在留資格変更時に、報告していなかったとのことです。※当時の違反法令は、労働基準法24条、37条他、3法令を指摘されていました。

これについては、特定技能運用要領には「特定技能雇用契約の締結の日前5年以内またはその締結の日以降に」出入国又は「労働関係法令」に関する不正行為または著しく不当な行為を行った者は、受入機関適合性に係る欠格事由に該当する、とあります。

入管としては、一旦は許可を出した申請であることには間違いないのですが、当時の事情、および講じた改善内容を記した改善報告書を求めることとなります。期日に沿って是正したことの資料に加え、それ「以降は、再発がない」ことを報告しなければなりません。

特定技能1号外国人の在留資格に係る申請書には、そのことを確認する項目がいくつもあるところ、いくら是正がなされたからといっても過去5年分の状況を正直に記載する必要があります。申請書は漫然と作成するのではなく(確かに、あまりに記載項目が多いため気持ちはわからなくもないのですが)、これをもって直ちに在留資格の不許可になるものではないと考えられますから、策を講じて再発に努めている旨立証資料や説明書を付けることが重要かと考えております。申請の際専門家に依頼する場合は、そういったことも含めた相談をすることをお勧めします。