在留カードの毀損、汚損等について

先日、在留期間更新のご依頼を受け、現在所持しておられる在留カードを確認した時のことです。

在留カード番号の部分が、きれいサッパリ、ない、のです。擦り切れがあった場合において、数字等が途切れ途切れに残っているようなものは見たことがありますが、さすがに「全く残っていない」のは初めてでした。

私の目が急に悪くなってしまったか、わざと消したかどちらかだなと思い、理由を聞いてみました。その方は、技術・人文知識・国際業務の3年で在留していた方で、この3年の間長財布に常に入れていたとのこと、ちょうどカードの1/8上方にあたるこの部分のみお財布から顔が出る形で、擦れてしまったようだ、とのことでした。

「ようだ」ってあなた・・・番号が擦り切れてなくなったのは知ってたんでしょ。しかも砂消し(なつかしい!)でわざと消したみたいじゃない。(掲載の画像はイメージですが、正にこんな感じでした。)

擦り切れた理由は故意ではなかったようですが、まぁたとえわざとであったとしても、わざとでしたとは言わないでしょうが、何はともあれ、そのままでは申請が出来ません。受付自体してもらえないのです。まず、申請前に再交付の手続きをしてから、当該在留期間更新許可申請となります。

因みに入管法第19条の13第1項前段及び第3項には、所持する在留カードが著しく毀損し,若しくは汚損し,又はIC記録が毀損した場合には、在留カードの再交付を申請することができる、とあります。あくまで「できる」ですが、しかしあまりに毀損等の程度が激しい場合は、早めに再交付申請することをお勧めします。そもそも重要な身分証明書ですから、大切に扱いましょう。

技能実習から特定技能変更の際の注意点について

はっきり言って、特定技能所属機関からしたら、即戦力になるのは、技能実習から特定技能の移行外国人でしょう。いくら技能試験に受かったからといって、雇用契約後すぐの実務に、机上の知識はどれほど役に立つのか。

そうなると、技能実習生の中で、特定技能1号外国人として引き続き日本で労働すると希望し、要件を満たす者が望ましいでしょう。

原則技能実習終了後は一旦は帰国するとされているところ、技能実習から特定技能1号外国人として、在留資格変更許可申請をする場合は、一時帰国を要することとはされていません。

ただし、技能実習制度は実習実施計画に則った運用が求められることから、申請のタイミングを計る必要があります。実習実施計画の修了日が優先されるため、在留資格変更許可申請の審査中に当該修了日が過ぎた場合は、特定技能1号の許可が出るまで労働は出来ません。資格外活動許可を取得するといった救済措置もありません。

例えば、技能実習3号ロで在留する者の技能実習修了日が9月30日だった場合、たとえ同じ企業で(実習実施者であり特定技能所属機関でもある場合)雇用される場合でも、在留期間が10月15日まであり、在留資格変更許可申請の許可が出たのが10月10日だったとしたら、10月1日から10月10日までの間はこの企業で働くことが出来ません。この特定技能制度というのが、如何にガチガチかということがわかります。

特定技能1号「更新」許可申請においては、引き続き当該在留資格をもって「期間」のみを更新するものなので、このような不都合はおきません。技能実習修了証書は、後日提出することとして、修了見込み証明書などを代替して早めの申請をお勧めします。

特定技能「受入機関適合性」について(10)

受入機関の行為能力・役員等の適格性についても、受入機関適合性に関わる要件として問われます。

特定技能基準省令2条1項4号のホ、ヘ、ル、ヲに定められています。ホは「精神の機能の障害により特定技能雇用契約の履行を適正に行うに当たっての必要な認知、判断及び意思疎通を適正に行うことができない者」、ヘは「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」です。これらは所謂、よく目にする、言ってみれば当然だと理解できる欠格事由です。

ルとヲは、特定技能基準省令2条1項4号に規定する「次のいずれにも該当してはいかん」とする欠格事由のイ~ヌ、つまりイロハニホヘトチリヌに掲げる10に及ぶ項目に該当していたらいけない人について規定しています。

ルの人とは「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」の「法定代理人」です。そしてヲの人は、「法人の役員」です。特定技能所属機関として活動しようとする構成員にも、その適格性について要件を問うものです。

ざっと書くと、禁錮以上の刑に関するもの、罰金以上の刑に関するもの、暴力団関係法令・刑法等違反に関するもの、社会保険各法及び労働保険各法の義務違反に関するもの、前述のホとヘに関するもの、技能実習法違反により実習認定を取り消された法人及び役員等に関するもの、外国人に対する不正行為や著しく不当な行為に関するもの、暴力団員等に関するもの―これらに該当してはいかん、というものです。

在留資格申請時には、業務執行に関与する役員の住民票の写し、関与しない役員がいる場合は、「特定技能所属機関の役員に関する誓約書」を提出し、欠格事由に該当しないことを立証します。誓約書には当該条文がバッチリ出ていますね。所属先を変えようが、審査に触れるということにもなると考えられますが、不正行為、著しい不当行為への厳しい対応のひとつです。

特定技能「受入機関適合性」について(9)

受入機関適合性に関わる「④関係法律による刑罰を受けたことによる欠格事由」については、当然のことながら想像に容易いのではと思います。

禁錮以上の刑、出入国または労働に関する法律違反による罰金刑、暴力団関係法令、刑法等の違反による罰金刑はもとより、社会保険各法および労働保険各法においての事業主としての義務違反により罰金刑に処せられた者も欠格事由に該当します。刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から「5年を経過しない者」が該当します。

特定技能1号外国人の在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更申請の際は、提出資料が非常に多いところ、この社会保険各法においての義務履行に係る立証資料として、社会保険料納入状況照会回答票か、健康保険・厚生年金保険料領収証書の24か月分の写しのいずれかを提出します。労働保険各法については、労働保険証等納付証明書(未納なし証明)や、直近1年分の領収証書の写し、労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書の写し等を提出します。

この事業主としての義務履行に対する入管の審査方針は、昨今ますます厳しくなっていると感じます。事業主が外国人だったとしても、違法になると知らなかったでは済まされません。ガイドライン「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」でも令和2年8月に改定され盛り込まれています。

https://www.moj.go.jp/isa/content/930005791.pdf

永住申請においても、いくら年収が高額だからといって、年金が未払いだったという理由だけで不許可となった高度専門職の外国人と最近話をしました。契約機関(勤務先)も超エリートです。その外国人は、年金制度を知らなかったんだと言っていましたが、いやいやここは日本ですので、先の事業主同様、日本の制度について意識を高くし、義務履行をしなければなりません。「意識」と申し上げたのは、「支払わなければならない、とうっすら気が付いているけど、払わなくても大したことないだろう」という軽い気持ちが外国人の方の心の片隅にはあり、そのあたりの意識を改めてください、といった個人的な気持ちが含まれます。ちょっとは知ってたんでしょ、と言いたくなったことが何度あったか。

話しを戻しますが、特定技能外国人を受け入れる企業としての意識、心構えは、技術・人文知識・国際業務の外国人を受け入れる際と比し、相当高いものを要します。その役員等にも適格性の観点から立証を求められますが、それは次の特定技能受入機関適合性である「⑤受入機関の行為能力・役員等の適格性の欠格事由」となります。

特定技能「受入機関適合性」について(8)

受入機関適合性に関わる「③行方不明者の発生に関するもの」について、特定技能所属機関が雇用する外国人を、その特定技能所属機関が責めに帰すべき事由があって行方不明者を発生させて場合には、受け入れ体制が十分であるとはいえないことから、特定技能基準省令に定める基準に適合しないこととなり欠格事由に該当します。

特定技能運用要領によると、「責めに帰すべき事由」がある(行方不明者を出したのは、特定技能所属機関のせい)とは、雇用条件に示す賃金を適正に払っていない、支援計画を適正に実施していない等の法令違反や基準に適合していない行為が行われていた期間内に、特定技能外国人の行方不明者を「1人でも」発生させていれば、本基準不適合となります。

ここで注意すべき点は、特定技能所属機関が技能実習制度における実習実施者であった場合です。受け入れた技能実習生を実習実施者の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させた場合にも欠格事由に該当します。特定技能所属機関が雇用する「外国人」とあるのは、実習実施者として技能実習生の行方不明者を出してしまったけれど、特定技能所属機関としてなら問題ない、またはリセットされる、ということは決してないからです。

技能実習生の失踪については、一概に実習実施者だけが悪いともいえないセンシティブな社会問題であると感じています。例えば、技能検定「随時3級」実技試験の義務化に伴い、技能実習生は、技能検定の受検は「人生で2回限りの権利」となります。それに不合格となれば、1年満了での帰国を余儀なくされ、当該技能実習生の「人生計画」を大きく狂わせ、場合によっては失踪及び不法滞在・不法就労を誘発させ得ます。だからといって技能検定に不合格だったというだけで実習実施者に帰責事由はありません。実習実施者にとっては優良要件の適合に影響が出たりはしますが。

国際貢献の名のもとに、実習生を安い労働力ととらえる建前と本音の使い分けはもはや限界であり、世界からも人権侵害の問題があるなどとして批判されている技能実習制度ですが、一言では片づけられない深層があると感じています。

特定技能「受入機関適合性」について(7)

受入機関適合性に関わる「②非自発的離職者の発生に関するもの」については、当然のことながら「自発的に」離職した者が出た場合は受入機関が欠格事由に該当しませんが、特定技能運用要領に定める「自発的に離職した者に『該当しない』場合」には注意が必要です。つまり、以下の場合には「非自発的に離職させた」こととなり、一人でも非自発的離職者を発生させた場合には、欠格事由に該当します。

①人員整理を行うための希望退職の募集又は退職勧奨を行った場合(天候不順や自然災害の発生,又は,新型コロナウイルス感染症等の感染症の影響により経営上の努力を尽くしても雇用を維持することが困難な場合は除く。)

②労働条件に係る重大な問題(賃金低下,賃金遅配,過度な時間外労働,採用条件との相違等)があったと労働者が判断したもの

③就業環境に係る重大な問題(故意の排斥,嫌がらせ等)があった場合

④特定技能外国人の責めに帰すべき理由によらない有期労働契約の終了

①については、「希望退職の募集」と「退職勧奨」との間に「又は」とあります。「人員整理を行うための」は「退職勧奨」にもかかると解されます。ということは、人員整理目的以外の理由で、適法に退職勧奨を行った場合で、労働者の自由な意思の下合意退職に至った場合は、当該労働者を離職させたことにはならず、自発的離職者にあたりうると解されます。

このことは、特定技能外国人の在留資格申請の際の提出書類、参考様式1-11号「特定技能所属機関概要書」内で確認されます。項目3の「基準適合性に係る事項」をご参照ください。この書類は、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請のいずれにも提出する書類で、このことは都度審査対象になるものです。

上記事由がないのであれば、当該離職者は自発的離職者に当たりうると解され、欠格事由に該当しないこととなります。①の「新型コロナウイルス感染症等の感染症の影響により経営上の努力を尽くしても雇用を維持することが困難な場合は除く」とある条文は、今のコロナ禍における経営の厳しさを受けてのものだと思います。如何にこのパンデミックを凌ぐのか、経営者の方のご苦労が窺えます。

特定技能「受入機関適合性」について(6)

受入機関適合性に関わる「②非自発的離職者の発生に関するもの」については、特定技能基準省令2条1項2号に定められていますが、それについては大変慎重な解釈が求められます。

非自発的離職者の発生に関する規定と聞くと、一見特定技能外国人を雇ったならば、支援を手厚くすることはもちろん、むやみに解雇してはならない、といったことかと思っていましたが、もっと厳格な規制であることが窺えます。受入機関(特定技能所属機関)が、現に雇用している国内労働者を非自発的に離職させ、その「補填」として特定技能外国人を受け入れることを禁じている、ということなのです。特定技能制度は、策は尽くしてもどうしても人材の確保が難しい、という産業を特定して創設されたところ、元から雇用していた労働者を解雇し、次なる労働者を迎え入れることをするのであっては、この趣旨とは明らかにそぐわないからです。そもそもこのような発想は、外国人労働者の方が日本人より安価に雇える、といったゲスな思惑が根底にあることが垣間見えますよね。

これは、特定技能外国人との雇用契約締結の日の「前1年以内」のみならず、雇用契約締結「後」も非自発的離職者を発生させてはならないことが求められます。

ただし、特定技能外国人に従事させるのと同種の業務に従事させる労働者を、非自発的に離職させても受入機関が欠格事由にあたらない場面があります。それを特定技能基準省令2条1項2号イロハで定めているわけです。

それは以下の通り相当程度に狭い範囲となります。

①労働者が定年その他これに準ずる理由により退職した場合

②労働者が自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された場合(つまり重責解雇、ですね)

③労働者が雇止めにより有期労働契約を終了された場合

③の場合は、もし労働者が有期労働契約の更新の申し込みをしたとか、有期労働契約の期間満了後すぐにまた有期労働契約の申し込みをしたような場合に、当該労働者の責めに帰すべき重大な理由や、その他正当な理由により、受入機関は申し込みを拒絶してこの有期労働契約を終了させる、といった場合に限られます。

②については、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるとしてその「解雇」が有効であるような場合でも、当該労働者側に責めに帰すべき「重大な」理由が必要で、その理由がない限りは、受入機関は欠格事由に該当してしまいます。その「重責解雇」の意義についても、相当程度重大なものと認識すべきでしょう。当該労働者が刑法規程違反による処罰を受けたことや、故意または重過失により事業所の設備等を破損した、信用失墜により受入機関に損害を与えた、機密漏洩等が考えられます。他に当該労働者の労働基準法に基づく就業規則の違反もあるかと思いますが、これについても軽微なものは該当せず、特に重大なものに限られます。

このように、特定技能外国人受入のためには、受入機関は相当な覚悟をもって人事労務管理を行い継続させ、同時に売上を伸ばし、職場環境を整える必要があります。非自発的離職者を出来るだけ出さないことは言うまでもありません。

特定技能「受入機関適合性」について(5)

受入機関適合性に関わる「①法令の規定の遵守に関するもの(労働、社会保険および租税)」については、遵守すべき労働関連法令の中に、労働安全衛生法への遵守も規定されています。

当該特定技能外国人雇入れ時の安全衛生教育はもとより、作業内容が変更した際および危険有害業務へ従事する際の安全衛生教育、また職長への教育も遵守事項となっています。健康診断も重要な遵守事項で、雇入れ時に法令で定められた項目の健康診断が必要です。

特定技能1号外国人の在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請においては、参考様式第1-3号「健康診断個人票」に定められた項目の健康診断実施と申請人の確認と署名も求められます(申請人には母国語で併記された書面で内容を把握してもらったうえで署名してもらう必要があります)。

その後も定期的な健康診断が義務付けられており(労働安全衛生規則44条、常時使用する労働者に対し1年以内に1回、定期健康診断を行う必要があります)、継続的な支援および管理が求められています。

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、1年以内ごとに1回、ストレスチェックを実施し、検査結果等を所轄の労働基準監督署に報告しなければなりません。これは確かに義務とはいえ、従業員の精神的負担やストレスを軽減、管理するためにも安全衛生管理体制を整えておく必要があるといえます。業種や常時使用する労働者の数によっては、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者等を選任する義務があることには注意が必要で、専門家に相談しながら体制作りに対応することが必要だと思います。

特定技能「受入機関適合性」について(4)

同ブログの「受入機関適合性について(1)」で記した「①法令の規定の遵守に関するもの(労働、社会保険および租税)」については、特定技能所属機関が労働関係法令、社会保険関係法令、そして租税関係法令を遵守していることを求められます。

従業員を雇うわけですから、当たり前と言えばあたり前ですが、そのあたり前を怠る企業も散見される中、改めて規制しているということになります。特定技能1号外国人の在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請においては、これらに係る添付資料で立証する共に、提出書類内で詳細に書き込むこととなります。在留期間更新許可申請においては、一定期間内に他の従業員申請時に提出していれば提出省略も可能ですが、内容に変更があった場合には提出することとなります。

注意が必要なのは、特定技能基準省令において「労働に関する法令」としているのみで、法令名を特定して規定していないことにあります。この意義は、数ある労働関係法のうち、一つでも遵守していない状態で特定技能外国人を雇用していた場合においては、受入機関適合性を満たさない、ということになります。

これは社会保険関係法令、租税関係法令においても同様であり、遵守していない場合には不法就労助長罪が成立する可能性もあります。

労働関係法令の遵守に付きましては、雇用契約の成立に当たり、あっせんの場面にも及びます。あっせんを行った者が職業安定法に基づく無料職業紹介の届出若しくは許可、または有料職業紹介事業の許可を得ている者か、といったことにも審査が及びます。参考様式第1-16号「雇用の経緯に係る説明書」にその経緯と詳細を記載することとなります。