受入機関適合性に関わる「②非自発的離職者の発生に関するもの」については、特定技能基準省令2条1項2号に定められていますが、それについては大変慎重な解釈が求められます。
非自発的離職者の発生に関する規定と聞くと、一見特定技能外国人を雇ったならば、支援を手厚くすることはもちろん、むやみに解雇してはならない、といったことかと思っていましたが、もっと厳格な規制であることが窺えます。受入機関(特定技能所属機関)が、現に雇用している国内労働者を非自発的に離職させ、その「補填」として特定技能外国人を受け入れることを禁じている、ということなのです。特定技能制度は、策は尽くしてもどうしても人材の確保が難しい、という産業を特定して創設されたところ、元から雇用していた労働者を解雇し、次なる労働者を迎え入れることをするのであっては、この趣旨とは明らかにそぐわないからです。そもそもこのような発想は、外国人労働者の方が日本人より安価に雇える、といったゲスな思惑が根底にあることが垣間見えますよね。
これは、特定技能外国人との雇用契約締結の日の「前1年以内」のみならず、雇用契約締結「後」も非自発的離職者を発生させてはならないことが求められます。
ただし、特定技能外国人に従事させるのと同種の業務に従事させる労働者を、非自発的に離職させても受入機関が欠格事由にあたらない場面があります。それを特定技能基準省令2条1項2号イロハで定めているわけです。
それは以下の通り相当程度に狭い範囲となります。
①労働者が定年その他これに準ずる理由により退職した場合
②労働者が自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された場合(つまり重責解雇、ですね)
③労働者が雇止めにより有期労働契約を終了された場合
③の場合は、もし労働者が有期労働契約の更新の申し込みをしたとか、有期労働契約の期間満了後すぐにまた有期労働契約の申し込みをしたような場合に、当該労働者の責めに帰すべき重大な理由や、その他正当な理由により、受入機関は申し込みを拒絶してこの有期労働契約を終了させる、といった場合に限られます。
②については、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるとしてその「解雇」が有効であるような場合でも、当該労働者側に責めに帰すべき「重大な」理由が必要で、その理由がない限りは、受入機関は欠格事由に該当してしまいます。その「重責解雇」の意義についても、相当程度重大なものと認識すべきでしょう。当該労働者が刑法規程違反による処罰を受けたことや、故意または重過失により事業所の設備等を破損した、信用失墜により受入機関に損害を与えた、機密漏洩等が考えられます。他に当該労働者の労働基準法に基づく就業規則の違反もあるかと思いますが、これについても軽微なものは該当せず、特に重大なものに限られます。
このように、特定技能外国人受入のためには、受入機関は相当な覚悟をもって人事労務管理を行い継続させ、同時に売上を伸ばし、職場環境を整える必要があります。非自発的離職者を出来るだけ出さないことは言うまでもありません。